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逆浸透膜(RO膜)の構造や原理、使用する際の注意点など解説します。

逆浸透膜(RO膜)の構造

トイレットペーパーと模造紙で試作しました。写真のように、透過水スペーサーは、何枚も重ね合わせて、日めくりカレンダーや付箋紙のように片方を接着してあります。RO膜と原水スペーサーは、重ねて半分に折り曲げてあります。重なった透過水スペーサーの間にRO膜と原水スペーサーを挟み込んで、RO膜同士を袋とじのように貼り付けて、透過水スペーサーを集水パイプに接着します。これをぐるぐる巻きにして、グラスファイバーテープで力いっぱい巻き付け固定して、不飽和ポリエステルとかを流してFRPにします。だいたいこんな感じで、RO膜のスパイラル膜が作られます。

逆浸透膜(RO膜)の原理

RO膜は、逆浸透膜と呼ばれています。調べたら、画像がたくさん出てくるので、調べてみてください。半透膜の前後で濃度が違うと濃い方を薄めようとする働きの浸透現象を利用して、逆に加圧して濃度差を大きくしてやろうという原理です。

・デッドエンド濾過方式

注射器のシリンジ出先に濾過膜を付けて、押し出すような方式をデッドエンド濾過といいます。分離膜の性能を試験するときに利用したりします。加圧すればするほど、濃縮されていくので、膜が詰まります。UF膜やNF膜と呼ばれる分離膜で、原液の目的成分を抽出させたり、逆に必要ない成分を取り除いたりできるか試験するときに使います。分子量の大きさで分離できるか判断するのでダイアフィルトレーションと言ったりします。なのでRO膜のような、水しか透過しない濾過膜では利用しない方式です。

・クロスフロー濾過方式

工業的に利用されているRO膜は、スパイラル膜と呼ばれる構造です。これは、クロスフロー濾過という濾過方式で、原液がスパイラル膜を勢いよく流れていくと徐々に濃縮されていく方式です。デッドエンド濾過と比べて、液の流れがあるので、RO膜に付着して詰まらせようとする成分をある程度取り除くことができます。スパイラル膜には、たくさんの流量と高圧力が必要です。

・なぜ水分子しか通さないか?

RO膜はなぜ水分子以外の分子やイオンを99.5%ぐらいカットして、ほどんど水分子だけ透過させることができます。なぜそんなにカットする事ができるのでしょうか?特にイオンは、かなり小さく、水分子の分子量18より小さいものもあります。

水は極性溶媒に分類され、水素結合によって水分子同士くっついています。イオンはプラスやマイナスなどの極性を持つので、水分子がイオンの周りをバリアみたいに覆います。これを水和といいますが、これによって見かけ上大きな物体となり、RO膜を透過することができなくなります。

※実は、溶存炭酸ガスや一部のアルコールなどは、水と一緒に結構透過してしまう。

・純水としての純度

RO膜を透過した水は、RO水と呼ばれますが、およそ3~5uS/cmぐらいの導電率になります。導電率とは、水の純度を測る指標で、導電率が低いほど、電気を流すイオンが少なく純水であるという事が言えます。水道水や井戸水が150uS/cmぐらいだったりするので、かなりイオンを分離できています。純水で洗い流すと、カルシウムやシリカが少ないため、乾いた時の白い斑点ができないため、拭き取り作業の手間を減らせます。

逆浸透膜の使い方

・設計ポイント

ポイント①:原水に塩素が入っているか?

RO膜の成分である芳香族ポリアミドが塩素に弱く、アミド結合が切断されて、純水の水質が低下します。水道水には次亜塩素酸ナトリウムが入っているので、そのまま膜に通してしまうと、短期間で劣化します。0.1ppmでも入っていたらアウトです。塩素を取り除くためには、活性炭に通水します。また、耐塩素性RO膜というのも開発されているそうです。

ポイント②:原水中の有機物はどうか?

原水として井戸水を使っている施設や工場では、微生物やフミン質などの懸濁物質がたくさん含まれていることが多く、このままRO膜に通すと、膜が詰まって、透過水量が落ちてしまいます。膜の詰まりやすさを表す指標としてSDIというのがあり、測定方法なども定められています。原水分析をして、SDIが4でもヤバいですが、5を超えていたら、前段で懸濁物質を取り除く処理をしなくてはいけません。UF膜を用いたりします。RO膜が詰まった時の洗浄方法もありますが、RO膜を搭載した純水装置には、安く抑えるために機能を持たせることができません。

ポイント③:原水中の鉄、マンガンはどうか?

原水中に鉄やマンガンが0.05ppm以上あるとヤバいです。水酸化第二鉄や二酸化マンガンがコロイドやスライム状態として、膜表面に析出してスケールを形成し、RO膜を詰まらせていきます。これらも前段処理が必要になります。濾過材に、鉄やマンガンをくっつけて処理する接触酸化法や酸化剤を用いて析出させてから濾過する物理濾過法があります。

ポイント④:原水中のアルミ、シリカ、カルシウムはどうか?

アルミやシリカ、カルシウムの濃度が高くても、RO膜にスケールができて膜詰まりが起きます。例えばシリカが120ppmぐらいある原水をRO膜に通すと、数か月で透過水量が半分ぐらいになります。この場合、スケール分散剤を入れて、スケールが膜に出来にくくします。

・RO膜の洗浄方法

膜の洗浄に塩素イオンは使えないので、硫酸イオンなどを使います。亜硫酸水素ナトリウム(SBS)やクエン酸です。膜の洗浄によってある程度は改善できますが、上記の原理でも説明しましたように、透過水側から逆流させて洗浄させれないので、膜の中で詰まっているものを洗い流すことができません。

ちなみに、RO膜の純水装置には、膜洗浄機能が付いているものが少ないです。なぜかというと、買い手は、RO膜を洗浄するための機能を装置に持たせて初期費用を高くするよりも、膜が詰まったら交換とした方が、設備維持費用として予算を取りやすいからです。また、定期的に洗浄をしたらどのくらいRO膜の交換頻度が減るか、RO膜の寿命が延びるかなどを明確に比較したデータをメーカー側も用意しません。売り手も膜の交換頻度が上がった方が、売り上げが上がるからです。

逆浸透膜のコストパフォーマンス

RO膜は、8インチ RO膜 1本で20万くらいして、原水水質によりますが、2年に1回交換するサイクルが多いです。8インチで5uS/cmの水質の透過水が1m3/hぐらい得られます。原水流量が4m3/h必要で、3/4が捨て水になってもったいないので、スケールができない範囲で、循環させるとだいたい原水流量が3m3/h必要です。

4インチRO膜だと1本で原水流量が1m3/hで透過水量が250L/hぐらいなので、1m3/hの透過水を得ようとすると、4インチRO膜が4本必要で、原水流量が4m3/h必要です。これでは、ポンプのサイズが大きくなってしまうので、2:1:1という接続にして、原水流量を2m3/hぐらいにします。循環させると1.6m3/hぐらいになります。つまり、ポンプのサイズを小さくすることができます。

例えば、 1m3/h の透過水が得られるRO膜の寿命を倍にしようとすると、前処理で数百万追加でかかったりするので、だったら新品に交換したほうが早いです。

思うところ

こういう膜製品は、FRPを使っていて、産業廃棄物として処理されるため、地球的にはあまり産廃として出るのは、やめた方がいいですが、現状は安いので、長く使用するより買い換えた方が早いです。また、中古を洗浄して保管しておこうとして、保管液に浸していても、カビが生えてきたりするので、長期保管にも不向きで、中古が出回りません。なので個人的には、産業廃棄物税の増加なので、排出抑制(リデュース)をかけた方がいいと思っています。

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