2021年の11月頃、韓国では尿素が不足してしまって、ディーゼルエンジンのトラックが動かせなくなって大問題でした。日本で尿素やアドブルーを製造している会社にも韓国からの電話がたくさんあったと思います。これは、オーストラリアと中国のいざこざで石炭が中国で不足してしまい、電力不足や尿素製造不足が起きて、韓国に輸出できなくなったからでした。
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また、2022年3月現在、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁でロシアが硝酸アンモニウムの輸出を禁止しました。これにより、窒素肥料の不足による作物収量減、尿素の輸出減少が懸念されています。
アンモニアや尿素、アドブルーは、これからどんどん世界的に需要が増えていくでしょう。そこで、アンモニアや尿素の製造方法やアドブルーの製造や商標取得について解説していきます。
アンモニアの製造方法
・アンモニア合成原理
アンモニアNH3の合成は、工業的にはハーバー・ボッシュ法で行われています。窒素N2と水素H2を高温高圧下で直接合成させて、アンモニアを製造しています。
N2 + 3H2 ⇄ 2NH3(+ 92.2kJ)
ハーバー・ボッシュ法は、フランスの科学者ルシャトリエさんが発表したルシャトリエの原理を化学工業に応用しています。濃度・温度・圧力に変化を加えると、変化を抑えようとする方向に反応するという原理です。
容器内に窒素と水素が充満しているとして、それをギュッと加圧して高圧にすると、窒素と水素が合体してアンモニアになることで、容器内全体の分子の数が減少する方向に働きます。他にも、平衡を右に移動させるために温度を下げる方法もありますが、反応速度が遅く時間がかかります。現在では、鉄を主成分とした触媒を利用して【圧力:20~100MPa】【400~600℃】で合成しています。
・原料:窒素と水素の作り方
では、そのアンモニアの合成で使う窒素や水素はどうやって集めるのでしょうか?こちらのブログや資料でも紹介してありますので、確認してみてください。天然ガスの水蒸気改質(スチームリフォーミング)で手に入れます。天然ガスの主成分であるメタンCH4と水蒸気H2Oから水素と二酸化炭素を作り、それを-200℃ぐらいの液体窒素を使って洗浄し、純度の高い水素ガスを得ます。窒素及び液体窒素は空気分離装置で空気を液化して作られます。
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天然ガスの代わりに石炭を使う事もあるようです。比較的、広範囲に分布されており、価格の変動が少ない上に安価なので好まれます。しかし、設備が複雑になり、灰の処理も面倒、エネルギー効率も悪いので微妙です。
尿素の製造方法
尿素は一般的に窒素肥料として利用されています。以下の引用元のように尿素は、アンモニアと二酸化炭素から得ることができます。カルバミン酸アンモニウムは、アンモニアカーバメートとも呼ばれている中間体で高い腐食性があります。高温、高圧、高腐食の環境下のため、ポンプなどの回転機械は使われないようです。このカルバミン酸アンモニウムの未反応物の回収工程がキモで、エネルギーロスの少ない尿素の製造ができるか設計技術がいる所だと考えられます。
尿素は,アンモニアと二酸化炭素から,次のような二段階の反応で合成される。
2NH3+CO2 → NH2COONH4(カルバミン酸アンモニウム)+157.5 kJ
NH2COONH4 → NH2CONH2 (尿素)+H2O-26.4 kJ
これらの反応は,170-200 ℃,14-25 MPaの高温・高圧下,無触媒で行われる。
インドネシアでの尿素プロセス開発と中国での実証
尿素合成は、東洋エンジニアリングがすごいようです。省エネルギー型尿素合成技術「ACES21Ⓡ」という規格というか基準を持っています。また、尿素用耐食材料を住友金属と共同で開発しています。
このように、尿素を作るには、高温、高圧、高腐食で設備も複雑で高価になります。そのため、大規模大容量で作った方が効率的で、自国で尿素工場を作るよりもフレコンに入った尿素を輸入したほうが安いし楽なのです。韓国は、それで輸入に頼りきりになって、輸入規制で不足してしまったんですね。
アドブルーの製造方法
昔のトラックはアドブルーがなくても走行できるんですが、今のディーゼル燃料のトラックはアドブルーを入れてないと走りません。ガソリンスタンドにもアドブルーを入れられるところが増えてきました。尿素SCRシステムといって、ディーゼル燃料の排出ガスのNOxガスを低減、除去できるシステムが開発されました。尿素水の製造方法は、簡単で温水で尿素を適度な濃度で溶かすだけで完成します。そして、トラックを走らせることは可能です。しかしそれでは粗悪品ばかりが出回ってしまうということで、高品位尿素水には「AdBlueⓇ」という登録商標が作られました。ドイツ自動車工業会(VDA)から認証された設備で作られた高品質の尿素水をアドブルーとして販売できます。
アドブルーの認証をもらうには、下記のサイトが参考になります。株式会社Schatzという会社で、VDA監査、検体検査内容を記載してあります。また、分析は、日本海事検定協会で行えるようです。自社での分析も可能そうですね。
このアドブルーの仕様をみるに、尿素を溶かす水は、水道水や地下水ではダメでそれを精製した純水でなければいけないようです。温純水に尿素を入れて、31.8%~33.2%の濃度に調整すれば、良いようです。下記のリンクには、尿素水に使用できる材質や温度での劣化具合などが記載されています。
以上がアンモニア→尿素→アドブルーの製造方法紹介でした。これから先、アンモニアの生産量が世界的に増加するでしょう。生産国の輸出規制などがニュースで報じられた時の参考になれば幸いです。
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