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ミドリムシからワックスエステルを効率よく取り出し、バイオ燃料にする

SDGs

以前に下記のような記事でミドリムシ(ユーグレナ)から油を抽出する方法の記事を書いたのですが、改めて調べてみたら、特許等も公開されており、ユーグレナの生産からバイオ燃料を作るまでの工程が記載されていました。

分からないなりに色々調べて、予想して書いていました。当時は、書いていて楽しかった記憶があります。しかし、特許を調べてみたら、普通に公開されていて、自分が予想したやり方とは全然違って面白かったです。今回も色々調べてみたので、説明していきます。

ユーグレナからバイオ燃料を製造する工程

・準備工程

まず、増産するユーグレナについてですが、普通に湖とか池とかにいる野生株でいいようです。油をたくさん含むことができる”突然変異株”や、油の炭素長を短く生産する”KAT1ノックダウンユーグレナ”などを人工的に作らなくてもいけるとのこと。

ユーグレナを育てる培地も地下水や水道水などでもいけるようですが、ユーグレナを育てるのに適した液体培地というのがいくつか一般的に知られているようです。(クレイマー・マイヤー培地など)

培地の調整のために、他の微生物が増殖しないように取り除いたり、必要な成分を添加し、ユーグレナを投入する工程です。

・好気培養工程

空気をバブリングできる大型タンクで、温度管理15~35℃、グルコースの濃度管理1~5wt%をしつつ、3日間ぐらい維持してユーグレナを培養増殖させる工程です。

・ワックスエステル発酵促進物質混合工程

脂肪酸を入れて、培地を酸性に保つことで、ユーグレナが体内に保有しているパラミロンをワックスエステルにたくさん変換してくれます。pH2.5~7、脂肪酸の濃度0.5~10mMです。

・ワックスエステル発酵工程

ユーグレナが体内のパラミロンをワックスエステルに変換するために、時間を置きます。常温5~35℃で、3時間窒素バブリングをして、若干培地の溶存酸素を減らすようにします。

・ユーグレナ回収工程

増殖してワックスエステルを蓄えたユーグレナを回収するために、固液分離を行います。例えば、遠心分離機を使用したり、膜ろ過を使います。

・ワックスエステル抽出工程

ユーグレナからワックスエステルを抽出する方法としては、物理的にプレスして、絞り出す方法があるようですが、有機溶媒で薄い細胞膜を溶解させて、油を抽出するも一般的のようです。

・バイオ燃料調整工程

ユーグレナから出てきた体液には、ワックスエステルの他にも様々な成分があるようですので、有機溶媒に改めて溶かして精製するようです。

ユーグレナがワックスエステルを生成するしくみ

ミドリムシとは和名で、微細藻類ユーグレナが学名です。大きさは、50umで、動物と植物の中間に位置するようです。成分としては、植物油に含まれている不飽和脂肪酸の他にビタミン、アミノ酸、ミネラル、パラミロンなどの元気成分が含まれています。

ユーグレナは、光合成ができたり、光がなくても動物っぽく餌を食べて生きれます。ブトウ糖、酢酸などの有機物があれば生きることができます。光合成をしなくなったミドリムシは、葉緑体が退化して透明になりますが、餌がなくなれば、光と炭素源で葉緑体は復活します。

ユーグレナにエサを与えて、動物っぽく育てると、パラミロンという多糖を蓄えます。人間が糖からエネルギー利用としてATPを得るように、ユーグレナもパラミロンからATPを得ます。そのプロセスとしては2通りあり、酸素がある雰囲気では、糖を色々な経路を経て二酸化炭素と水に分解してATPを獲得し、酸素がない雰囲気では、パラミロンを分解してATPを生成した代謝物としてワックスエステルができます。

したがって、ワックスエステルをたくさん蓄えてほしいときは、酸素がいっぱいある液体でエサを与えて太らせて、低酸素にしてワックスエステルを作ってもらうという事です。さらに、脂肪酸を加えると、好気呼吸を抑制することもできるようです。

所感

上記のやり方で、大体、重量の20%のワックスエステルができるっぽいです。1トンのユーグレナで200キログラムのワックスエステルでしょうか?

”ワックスエステルを得るために使用する電力が大きい問題”というのがあるようです。

しかし、ユーグレナのバイオ燃料設備は、液体培地を作ったり、遠心分離機にかけたり、有機溶媒で溶解したりしますが、全体的にいうと、そんなにコストがかからないような気がします(高温、低温、高圧、減圧、腐食物を扱ったりしないため)。1バッチにかかる運転時間が長いのがネックですが。

また、他のバイオ燃料として、廃油を使うバイオディーゼル設備や牛糞などを使うバイオガス設備のように有限の資源を使う方法は、廃油や牛糞も有価になって高騰するでしょう。社会が捨てる油の量、牛や豚が排泄する糞の量も増えたりしません。その分、自己増殖するユーグレナの方が利点はありそうです。同じような理由で、大規模プラント化にも優れていると思われます。

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