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井戸水を活性炭に通す意味について過去の歴史や浄水場での水処理から考える

以前、下記の記事で井戸水を使用する前に水質検査を行う事をオススメしました。また、問題なくても活性炭に通水した方がいいことについても触れました。

今回は、水道の歴史からどのように水処理が行われていったのか解説し、現在の水道の処理方法についてのまとめ、活性炭処理の仕組みについて記載していきます。

水道に関して調べていく中で、水道博士 増子 敦 さん著「誰もが知りたい 水道の話」を結構参考にしました。水道全般について分かりやすく書かれています。この方は、YouTubeでも「水道の話」を投稿されています。ネクパブ・オーサーズプレスという個人出版サービスを利用されています。

昔の水処理について

ロンドンの水道事情

汲み上げた井戸水を処理するようになった経緯については、ロンドンを中心に調べていくとわかります。ロンドンでは古くからテムズ川や浅井戸から直接水を汲んでおり、13世紀からは人口4万人ほどで、各所から取水しては、市内に導水して使っていたようです。また、この頃はまだ、汚物は道端や溝に流していたようです。

伝染病が上下水道を発展させた

水問題研究所

16世紀ごろから、人口8万人近くなり、1582年にテムズ川に水車で動くポンプを設置し、配水しています。市内には水道会社や設立され、上水道工事などもやっています。しかし、人口の増加や船の往来も多くなり、河川の汚染が酷くなっていきます。これにより、上流から取水したり、地下水や色んなところから引っ張ってきているようです。

そして、産業革命によって人口が爆増、19世紀には80万人までになりました。一方このころに、スコットランドのペイズリー市でジョン・ギブという人が繊維工場に使うきれいな水を得るために、川の水を礫層と砂層に通してろ過する方法を考え付きました。後にチェルシー水道会社のジェームズ・シンプソンが緩速ろ過方式としてテムズ川で試験的に実施し、1829年に実用化しています。この時に、砂層の高さや詰まった時の対応策などが分かっていったようです。

コレラから人々を救ったペイズリー

この頃に、インドにてコレラの大流行が起きます。これらヨーロッパにも広がって大問題になりました。コレラは、もともと海や川に生きている菌で、人の体に入ると腸内で繁殖し、脱水や下痢を引き起こします。この時は、何が原因か分かっていません。

1848~1849年には、ロンドンにて1万人以上がコレラによって死亡する大流行が起きました。このとき、ジョン・スノウという医師が、患者の発生状況などを色々調べて、水道水を飲んでいる事によって起こっていると提唱しました。1854年に再び流行したときには、下水による川の汚染区域からの取水や、汚水溜めからの井戸への漏れが原因であると主張しました。この頃にも賛否両論あったようですが、彼の統計や疫学的手法は評価されていたようです。

実は同年にイタリアのフィリッポ・パチーニ医師がコレラ菌を発見していますが、注目されていません。1884年にドイツのロベルト・コッホ医師が、独自でコレラ菌を発見するまで、世に注目される事もなかったのに、状況証拠から原因因子を見つけるのはすごいですね。

そして、1885年には、緩速ろ過方式は、病原菌も除去できると明らかにされました。また後に、上流から取水している会社が緩速ろ過をしているから感染率が低い事も分かったようです。

緩速ろ過方式は、砂、砂利にゆっくり水を通してろ過する方法ですが、砂の表面に微生物による膜(バイオファウリング)が発生し、これが病原菌を防ぐ役割をします。

緩速ろ過の効力は、1892年にドイツのハンブルグで起きたコレラ感染で、実証されました。ドイツのエルベ川が汚染され、水源として使っていたハンブルグではコレラ感染が流行し、死亡者が多く出ました。同じく下流にて取水していたアルトナでは、緩速ろ過をしていたため、コレラ感染による死者がいなかったのです。

日本の水事情

日本では、1898年に淀橋浄水場で緩速ろ過方式により水の供給が行われました。かつては、新宿駅近くにあって、現在は移転しています。それまでは、木の樋(とい)で木樋(もくひ)と呼ばれる水道管で水路を作っていました。開国後にコレラが流行したり、木樋の老朽化や水圧が無いため火事が消せないなどの問題がありました。

このようにして、人々は、水をろ過して飲むようになりました。

浄水場での水処理について

現在では、厚生労働省より浄水場で行われる水処理方法について「通常の浄水処理」と「高度浄水処理」と区別して取り扱われています。

・通常の浄水処理方法

上述した緩速ろ過や、凝集沈殿+急速ろ過、精密ろ過膜などで濁質の除去を目的とする処理です。

凝集沈殿+急速ろ過は、砂ろ過で本来ゆっくりとろ過して砂表面にバイオファウリングを作らなければいけないところを、沈殿池などを設け、ポリ塩化アルミなどの凝集剤を使って、微細な土などを塊にして沈殿させ、上澄みを砂ろ過しています。砂ろ過の砂も新しいうちは、マイナス電荷を持っているので、凝集剤をキャッチします。凝集剤を使わないで急速濾過を行うと、下の図のように土の粒子は、砂ろ過をすり抜けていきます。大きなタンクに砂を積層してろ過するタイプでは、砂の上面に溜まったゴミを逆方向から水を流して洗浄する(逆洗)などを行います。さらにアンスラサイトと呼ばれる砂よりも軽くて粒が大きい石炭のろ材を積層して、水の濁りの除去力をアップしたりできます。

ろ過のメカニズム

「水道事業における高度浄水処理の導入実態及び導入検討等に関する技術資料」について

仙台市水道局 浄水場のしくみ

・高度処理方法

粉末活性炭処理、粒状活性炭処理、オゾン処理、生物処理の一つまたは複数を通常の浄水処理に組み合わせた浄水処理のことです。

高度処理方法の浄水場では、実際には活性炭による処理が多くの場所で行われています。日本には、浄水場及び消毒のみの浄水施設が5270カ所あり、高度浄水処理を行っているのは、355カ所(平成18年度時点)です。人口が多い場所では導入されています。過去の記事でも触れたのですが、水に関しては、人口が密集している都会の方が水道インフラにも資金をまわせるので、しっかり管理されており、安全であると言えます。逆に地方の方が、工場排水や坑排水が地下水に染み込んだり、水道管の老朽化などの問題で気を付ける必要があります。

一般家庭でできる水処理方法として活性炭処理

そんなこんなで、水道水ではなく井戸水を生活用水として利用する場合は、何らかの処理をするのが賢明です。浄水場のように凝集剤や次亜塩素酸ナトリウムを添加して、砂ろ過や活性炭処理など出来たらいいのですが、維持管理の大変さや費用の面でも避けたいです。

最低限で考えた時、活性炭処理はしておくのがいいと思います。

活性炭とは炭素を主成分とした多孔質体、つまり隙間がたくさん空いている粒状のろ材です。

この隙間に不純物を吸着させたり、微生物の住処にして食べさせたりする事で、水をキレイにします。

除去できるのもとしては、カビ臭や揮発性有機化合物、遊離残留塩素など。

ゆっくり水を流して微生物に取り込ませる生物処理として使うなら、脱窒が出来ます。

ただ、フミン酸やフルボ酸などの難分解性の有機物などは除去できないようです。

【最近、地下水が汚染された例 (以下、2022年8~9月の記事より)】

「住宅の井戸から猛毒ダイオキシン」2年間も基準超過、地下水に広がり対策困難~福岡

工場の土壌から基準値を超える鉛 静岡市

中郷区藤沢の工場敷地で基準超過の有害物質4種類を検出 周辺に飲用井戸はなし

ダイオキシンも活性炭で除去できます。

活性炭吸着法 技術の概要 ダイオキシンの除去に有効

丸山製作所のろ過器 TSJシリーズには、活性炭ろ過器やアンスラサイトろ過器という自動でタイマーで逆洗を行ったりしてくれるものがあり、オススメなのですが、取り扱っている商社や丸山製作所に問い合わせる必要があります。

一般家庭でできる一番現実的な案としては、活性炭フィルターに通して使用する事です。

上の商品は、活性炭が付着してあるフィルターと1umの糸巻フィルターが連結してあります。糸巻フィルターは、1umと細かい隙間になっているので、大きめの細菌や小さなゴミ、夾雑物などは捕集してくれます。原水の水質にもよりますが、1~2カ月に1回ぐらいは交換が必要です。

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