ボイラーと呼ばれるもの
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)にボイラーの定義について記載があります。
ボイラーと呼ばれるものを使用する事業者は、ボイラー及び圧力容器安全規則にしたがって、各届け出や検査、管理の仕方とか、ボイラー技士からボイラー取扱作業主任者を選任するようになっています。
上記のボイラーと呼ばれる区分について、分かりやすく図にしているのが、日本ボイラ協会です。
それぞれの記載文として分かることは、ゲージ圧や伝熱面積、容器の容量、サイズによって、ボイラーの定義がされていますが、そもそもボイラーかどうかについての判別については分かりません。
しかし、労働安全衛生法のボイラーの定義にある”ゲージ圧力0.1MPa以下で~”というのは、使用圧が正圧(ゲージ圧力0MPa以上)である事が暗黙の了解としてあると思われます。
真空温水ヒーターも缶内に含まれる水をバーナーで蒸気に変えていますが、真空ポンプによって缶内を減圧(負圧)にしているので、ボイラーではないという主張です。
ここでは、”温水ボイラー”についても真空温水ヒーターは、当てはまっていません。
真空温水ヒーターの導入時メリット
・ボイラーに関する規制や取扱資格者が不要
→真空温水ヒーターは、ボイラーではないので、”ボイラー及び圧力容器安全規則”は該当せず、各届け出や検査、管理、資格者が不要です。
真空ポンプによって密閉容器内を減圧し、外部から加熱して100℃以下で沸騰させ、その蒸気を熱源として安全な温水を生成します。この装置は減圧ボイラーとして分類されず、ボイラーに関する規制や取扱資格者が不要です。
法的な規制を受けるボイラは一定の資格者でなければ扱えません。法的な規制を受けるボイラとは「ボイラー及び圧力容器安全規則」の対象になるボイラのことで、通常の大気圧ではなく、圧力のかかった缶体で高温の温水や蒸気を取り出すボイラのことです。このようなボイラは、当然、危険度も高いので、取り扱い、設置、管理などに法的な拘束を設けている訳です。
対して、真空式や無圧式の温水ヒーターは、法的にはボイラに該当しないボイラです。法的にボイラに該当しない理由は、大気圧の沸点を超える温度の液体を保有しないことや、缶体に圧力がかからないなどから、法的な規制を受けるボイラと比べてて安全であるなどの理由からです。法的なボイラに該当しない最大のメリットは、取り扱いに免許や資格が不要で、特別な知識がなくても誰にでも簡単に取り扱えることです。このような資格不要で扱えるボイラを一般には簡易ボイラといいますが、法的には簡易ボイラという言葉の定義はありません。
・ボイラー室がいらない
上記では、”各届け出が必要ない”という記載をしてますが、実際は、燃料として都市ガスや灯油を使用するわけですので、その際の届け出は必要です。
都市ガス使用なら設置場所の役所で、都市ガス使用、工事申し込み申請のための書類の提出が必要でしょう。しかし、消防法には該当しないため、ボイラー室は必要ありません。屋外設置も可能です。
灯油焚きを行う場合は、1か月あたりの灯油使用料によりますが、消防法に該当するため、ボイラー室の設置、危険物取扱関係の届け出が必要となります。
・軟水器が必要ない
ボイラーは、蒸気を発生させるために、水の供給が必要です。このときの水は、ボイラー内で濃縮されていき、CO2が気体となって出ていくので、濃縮水は、アルカリ性になります。蒸気には、CO2が含まれて、熱交換後の冷えた凝縮水は酸性になり、鉄を錆びさせます。
真空温水ヒーターは、密閉タンク内に入っている水を蒸発、凝縮させて循環して使うので、上記のような問題は起こりずらいです。
また、ボイラーは、水を供給する際にカルシウムやマグネシウムを取り除かなければいけません。ボイラー内でスケール化して熱交換効率を下げてしまいます。これを防ぐために軟水器を入れて、カルシウムやマグネシウムをナトリウムと置き換えて軟水化します。このとき、軟水器の中に入っている軟水樹脂は、カチオン樹脂で、塩によって再生します。下記のブログでも記載しています。
軟水樹脂などのイオン交換樹脂は、長期使用していくと、だんだんと劣化するため、消耗品の扱いとなります。数年に一回交換が必要です。企業は、点検、消耗品交換をストックビジネスとして利益を出しています。
真空温水ヒーターは、水を供給しなくてよいため、軟水器が必要ありません。
真空温水ヒーター 技術について
・プレパージ、ポストパージが必要なため、連続運転させた方がよい
プレパージというのは、着火前に新鮮な空気を装置に取り込む工程、ポストパージというのは、水分を含んだガスが冷えて結露し、低温腐食にならないようにガスを排出する工程です。
この低温腐食というのは、硫酸などで起こるのですが、この硫黄分は、都市ガスに含まれる付臭剤に含まれています。ガスが漏れたら分かるようにしてるんですね。
また、工業用燃焼炉の安全通則というもので、義務付けられていますので、ボイラーやヒーターの運転時は、自動でこれらの工程を行う制御になっています。燃焼室容積の3倍ぐらい空気を入れ替えるので、燃焼室を冷やすことになり、燃料消費が大きくなります。
・潜熱回収装置は、値段が高い
バーナーで燃焼する際の排ガスの余熱を再利用して、温める装置です。エコであるのは、理論上間違いないですが、ボイラーやヒーターをもう一台買うぐらいの費用がかかります。その割に熱回収効率は、数パーセント良くなる程度です。
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